破産手続きをしながら事業を継続させる方法(事業譲渡)に

こちらのページ下部に動画もございますので、そちらも是非ご覧ください。 


コロナの終息後もなかなか売上が戻らず、事業を継続しても借金の返済ができずに、破産手続きにより事業を辞めようと思われる方も多いと思われます。

 ただし、単に破産手続きをするだけでは、借金の問題は解決しますが、せっかくこれまでやってきた事業がそこで終わることになり、これまで積み上げてきた技術や顧客を無にしてしまい、従業員も路頭に迷わせることになってしまいます。そこで、借金を整理しながら、事業を継続させることができる方法について、説明します。

典型的な方法は、民事再生法手続きにより、事業を継続して、手続きの中で旧会社の事業を新会社に譲渡する方法です。民事再生法は、倒産の手続きの一つですが、事業を止めることなく手続きをすることができます。これが破産手続きとは大きな違いです。


ただし、民事再生法は申立費用(予納金)等が数百万円もかかりますし、規模の大きい法人を想定していますので、あまり資産がない小規模の法人や個人事業主の方がこの手続きを利用するのは難しそうです。

そこで、飲食店や個人商店のような資産の少ない小規模法人や個人事業主の方で事業を継続しながら、借金を清算する方法として、破産手続きの申し立てと同時に営業を譲渡して,取引先その他事業そのものは存続させるという手法があります。

 この場合、事業を買い取る新会社(スポンサー)の下で、事業を継続しながら再建ができ、また、代表者自身も新会社に勤務するなどして、生計を立てられるというメリットがあります。


 ここで新会社の経営者は、会社の経営者とは無関係な外部の資本であることが望ましいのですが、他方、旧会社の経営者の親族や旧会社の従業員であることも多々あります。

 事業譲渡というと、大がかりなイメージがあり、中小企業といえども、工場があったり、従業員が多い企業向けの手法かと思われがちですが、相応の規模感のある企業だと、事業譲渡に際して支払われるべき対価が高額化し、かえって困難となります。

 事業譲渡と破産の組み合わせによる事業存続は、むしろ小さな会社に向く手続きであると思います。どのような会社が事業譲渡後破産に適しているかというと次の特徴があります。これを見てゆくと,小さな会社こそ事業譲渡+破産の手続きはとりやすいことになります。

①事業に不可欠な固定資産がない,または少ない。

 旧会社に不動産などの固定資産があり、これが新会社に引き継がれるとなると、新会社が支払うべき譲渡の代金が高額化してしまいます。そのため、不動産を買い上げる程度の資力のあるスポンサーが必要となってしまいますが、そのようなスポンサーはなかなか見つかりません。

②現金払いの仕入れが多い

 事業譲渡をして,新会社の下、事業を継続したとしても、旧会社の手続きは破産である以上、どこかのタイミングで弁護士が介入し債務の支払を止めることになります。ここにいう債務は銀行だけではなく、仕入や下請けなどの債務も含みます。銀行については,弁護士が介入し支払を止めても、クレームを言うことは殆どありませんし、影響はありません。
しかし、仕入や下請けの債権者が、旧会社に「引っかかった」状態で「新会社」と取引をしてくれるかは微妙です。感情的には裏切られたという感覚でしょうから、新会社とも取引をしてくれない可能性があります。
 仕入などが現金払いのケースなどでは、仕入先への不払いがないわけですから、新会社との取引も行いやすいということになります。

③リース物件が古い

 事業に必要なリース物件についても事業譲渡にあたっては、新会社に引き継ぎたいところです。しかし、リース会社が新会社にリース契約を引き継ぐかは、リース会社の与信判断であって、旧会社や新会社がリース会社の判断を拘束することはできません。
 リース物件が高価の場合や、新品であった場合、リース会社はリース物件を引き上げてしまいがちですので、リース物件は古く、たとえば再リースになっているなどの方が、事業譲渡の際にはリースの引継が上手くゆく場合があります。

 破産直前に事業を継続した場合、管財人はどのような点を気にするか

 事業譲渡後破産をする方法は、大きなリスクがあります。それは、事業譲渡後になされる破産手続において事業譲渡契約が破産直前に行われた濫用的なものであるとして、否認される(取り消される)があるからです。否認されることになると、事業譲渡契約が全て取り消され、譲渡された不動産などの資産関係は全て返還されることになります。
破産をする前に事業を譲渡しているのですから、債権者が財産の隠匿を疑うのは当然です。また、債権者の心理としても、「破産したはずなのに,社長ほか従業員が同じ事業を続けている」というのでは、納得が得られません。そのため、破産管財人も通常の破産事件に比べて厳しい目で破産前の財産処分をチェックするように思われます。

①資産の評価額より高価であること

 例えば,事業譲渡代金が200万円とした場合でも,旧会社から新会社に譲渡された資産の価値が200万円を上回るとき,破産管財人は不足分の支払いを求めてきます。
 また、管財人によっては旧会社の営業利益の状況なども考慮し、安い金額での営業譲渡を問題にすることがあるので、注意が必要です。その場合に破産管財人は、譲渡した事業の価値をバランスシート等の決算書関係や、DCF法式(将来得るキャッシュフローの割引現在価値をもって評価する方式)による事業価値などから計算し、その価格が適正でない場合には否認の主張をすることになります。

②新会社の資金が旧会社から出ていないこと

 新会社が旧会社の事業を買い取るわけですが,事業譲渡の代金が,実は旧会社から出ていたということでは,問題があります。旧会社は直後に破産するのですから,新会社の資金を拠出するのではなく,その資金を残しておき,債権者に配当をすべきだからです。
 そのため,新会社を旧会社破産直前に設立し,事業譲渡を行う場合などは特に,新会社の資本金などが,旧会社や同代表者から出ていないことを資料とともに示す必要があります。

③新会社の資産が旧会社に入っていないこと

 新会社は取引先を引き継ぐのですが,新旧会社の営業は間断なく行われなくては,取引先に迷惑をかけてしまします。そのため,旧会社の廃業と事業譲渡は同時に行われるのですが,廃業時に残っていた売掛金は当然旧会社の資産であり,旧会社に入金されなければなりません。これが誤って新会社に入金されていると,後日,旧会社の管財人に新会社が精算を求められることになります。

④新会社との関係

 新会社の代表が旧会社の代表者の妻であるなど,親族間での事業譲渡があるような場合,管財人は安く事業を譲渡したのではないかと疑われます。もっとも小さな会社の場合,親族以外から新会社の資本が出ることの方がレアケースといえます。そのため,新会社のオーナー・経営者が旧会社の代表者の親族であるような場合もやむ得ない場合が多いように思います。
 ただし,新会社の資金が旧会社から出ていないことをしっかり示していく必要があります。

 動産の売買という方法で引き継ぐ方法

  今まで述べたように、破産+営業譲渡の方法の場合、結局、営業譲渡の代金すなわち営業権の評価というものが多様な評価方法があるために、特に利益の出ている事業の場合、管財人の判断次第で否認になるか否かが決まることになり、確実な方法ではありません。
  そこで、例えば、飲食店などの場合、破産手続きの申立てとほぼ同時に店舗内にある動産を売買で譲渡するという方法が、金額も明確であり、否認のリスクを回避する方法です。この場合はいわゆる「居抜き」で店の中身を引き継ぐことになりますが、資産の金額は食器やテーブル・椅子等の動産ですからそこまで多額になりません。
実は、小規模のお店を営んでいる人はこの方法が一番確実で手続的にもリスクの少ない方法と言えます。

 倒産状態における事業譲渡のリスクを回避するために

  このように、倒産状態における事業譲渡については、手続きを進める上で大きなリスクがあります。
最も確実な方法は、破産の申立段階で裁判所や破産管財人の弁護士と事前に打ち合わせをして、「このような形で営業譲渡・売買契約をする」ことについて、内諾を得てから、申立とほぼ同時に譲渡をすることです。
そうすると、このような方法を取りたい場合には、事業譲渡をした後、破産手続をする直前に弁護士に相談するより、その前の早い段階でどのような方法を使うべきか相談すべきでしょう。


下記では、10分ほどで動画でまとめておりますので、是非ご覧ください。また、チャンネル登録もいただけますと幸いでございます。

 

費用

報酬110万円(税込)~
経営者保証ガイドライン33万円(税込)~
事業譲渡コンサルティング ※133万円(税込)~
※債権者、債務額により増額する場合があります
※1 スポンサーとなる企業の調査、交渉を行います。業種によって費用は増減しますので、別途お問い合わせください
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